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ケー・イプシロン(k-ε)2方程式モデルを実際のタワーマンションのビル風の予測に使用するとどうなるかを比較検証してみました。0方程式モデルとこんなに違うということがわかるかと思います。
比較検証するモデルとなったタワーマンションは、大阪市内にある35階建てのマンションです。計算のモデルと建物の外観を以下に示します。左から順に、ケー・イプシロン(k-ε)2方程式モデル、0方程式モデルの計算領域、実際のマンションの写真の順です。
計算結果
風向: 西南西
ケー・イプシロン(k-ε)2方程式モデルによる予測結果
大阪で最も頻度の高い西南西の風における風速分布の結果です。ケー・イプシロン(k-ε)2方程式モデルでは、この程度の大きさの計算領域ですと、ワークステーションクラスのコンピュータで1日程度の計算時間が必要です。
k-ε2方程式モデルの結果では、まず建物の正面に風がぶつかり、1で吹き下ろし、ここから左右に分かれて吹いていきます。その1つは建物の右下の2で風速比が最大1.0となっています。この場所が東隣の建物3と向かいの建物4で作られるビルの谷間に相当することから、風の流路がオリフィスのように絞られて風速が高まっている様子が伺えます。こうした、流路が狭まると圧力が増して流速が高まる現象は、流体の原理ベルヌーイの法則に従っており納得しやすいものです。
さらに南東側の建物の角5を過ぎた風は、隣のビル3との間で、やはりオリフィスとなるため、風速比1.0となっています。そしてその右の方には、建物から吹き下ろした風が左回りの渦となって6で逆流を作っており、その結果7の、こちらもビルのオリフィスとなるため風速比0.9となっています。
一方、1から北側に分かれた風は北西側の角7で風速比0.9となりますが、すぐに建物から剥離して、向かいの建物9にぶつかって風速比0.9となります。前述の風洞実験の結果と同じで、角を通過した風は壁から剥離してやや離れた地点で最高風速を示すという、流体の慣性力を考慮すると納得しやすい結果となっています。このほか8を北方向に交差点を直進して通過した風は、10でやはりビル間のオリフィスとなるため風速比0.7となっています。
0方程式モデルによる予測結果
この方式では粘性の係数を流速によらず(大きめの)一定値と仮定して簡略に検査を行います。この程度の大きさの計算領域ですと、ふつうのノートパソコンで数分で計算可能です。
風の流れは、まず1で風が建物にぶつかりますが、吹き下ろしの風もなく、不思議ときれいに2方向に分かれています。右方向に進んだ風は、建物の3分の2程度進んだところで2の最高風速を示し、そこを通過すると、オリフィスに差し掛かったにもかかわらずここで減速します。2の風速比は1.8程度と大きな値となっています。そしてさらにその下流側の3周辺では、逆流もなく、風速も大きくなってはいません。実際の建物では風下側のビルの裏側3のような場所では、高層建物からの吹きおろしの風があり、風速比が本来高まるはずの場所ですが、この計算では納得しにくい結果となっています。
そして、1から北方向に別れた風は、4の角で最高風速、なんと風速比2.0とあり得ない値となっています。そして建物の角を吹きすぎると急激に減速し、その後再び建物の3分の2程進んだところ5で風速比1.4を示し、減速して行きます。このように0方程式の計算結果では、風が上流からどのように流れてくるかといった状況はあまり関係がなく、建物との位置関係でほとんど風速が決まってしまって、現実の風の流れとはやや違った傾向を示しています。そして、k-ε2方程式モデルに比べてかなり大きい風速比となっているといえます。
風向: 北東
ケー・イプシロン(k-ε)2方程式モデルによる予測結果
さらに風向を加えて、反対の北東、すなわち冬の卓越風についても検証してみましょう。まずk-ε2方程式モデルからです。
風の流れは、1で建物にぶつかりますが、ここでは風速はあまり大きくはならず、この風下の2で風速比0.9となります。また建物の直近では、吹き下ろし風がビルのオリフィス3で風速を増し、その後慣性力があるために吹き出して、向かいのビル4に吹き付けます。k-ε2方程式モデルでは、こうした流路が狭まると風速が大きくなるという自然な現象が表現できています。そして、最も風下側5に行くと、逆流域となって上空とは逆方向の風となっており、これも実際のビル風で観測できる現象です。
一方、1から西方向に別れた風は、6の角で最高風速、風速比1.0となっています。そして建物の角をすぎるといったん減速しますが、その後向かい側のビルの角7に吹き付けて、再び風速比1.0に増速しています。このように建物の角から剥離した数は、4や7といった建物からやや離れた場所で風速を高めます。しかし、そこは計画地内では無いため、植栽等の対策ができず対策困難なビル風問題となっています。k-ε2方程式モデルはこのような問題を見落とすことなく、安全側の評価でビル風の危険性を示してくれることから、信頼できる計算手法といえます。他方、0方程式モデルではこの問題を見過ごす危険性があり、中高層建物ビル風の評価にはふさわしくないと考えられます。
0方程式による予測結果
最初に風上側の建物に風がぶつかったところ1で風速比が高まり、すぐに減速します。前述のk-ε2方程式モデルで見られたような下流側の2で風速が高まる現象は表現できていません。さらにその風下3では風速比は、オリフィスを過ぎたところでなんと2.0を示し、すぐに減速しています。風に慣性力があるわけではなく、建物との位置関係によって風速が決まっているようです。そして建物の風下側4では、逆流や吹き下ろしの風もなく、ほぼ1方向に風は流れています。
一方、1より西方向に別れた風は、5の角で最高風速、風速比2.0となっています。そして建物の角を吹きすぎるとやはり減速し、その後は向かいビルに吹き付けることもなく減速しています。このように0方程式モデルの計算では建物の角付近で必ず風速が高まり、建物の近傍の剥離風の検討には有効です。しかし、風が勢い良く吹き抜ける慣性力を表せないため、建物からやや離れた場所での強風域を見落とす危険性があり、中高層建物ビル風の評価にはふさわしくないと考えられます。
この0方程式モデルの予測計算プログラムは、建築設計者が設計時の建物のビル風を改善するための設計ツールとして作られたものであり、計算精度よりも使い勝手の簡便性に重きが置かれています。逆にビル風問題の検証用の手法としては、前述のような対策困難な近隣のビル風問題を見落とす危険性があるり、本来は使うべきではないと考えられます。
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