風洞実験結果のまとめ方

(1)風速比
 風速比(測定点での風速÷観測所風速)は、各測定点での建設前,建設後,対策後の風速比をレーダーチャート上で同一図に重ねて示します。下の図では建設前(点線)に比べて、当地の卓越風向である北北西や南西の風向において、建設後(実線)のレーダーチャートが大きくなっており、風速が増すことを表しています。そして対策後(太線)はレーダーチャートが小さくなり、建設前同等まで改善される様子がわかります。このように風速比レーダーチャートでは測定点毎の風速の変化や改善状況が感覚的に把握することが可能です。

レーダーチャトによる16風向の風速比の表現。建設前、建設後、対策後を比較して計画建物建設しても環境が保全されていることがわかる

(2)風速の超過確率,累積頻度
 風環境の評価を行う場合,どの程度の風速がどの位の割合で吹くかが評価の判断基準となるため,統計処理された風速のデータとして,各測定点での風速の超過確率(発生頻度),累積頻度(非超過確率,累積確率)を表します。下の図では対策前(点線)に比べて建設後(実線)は累積頻度を表す曲線が上に移動し、風環境評価がランク1からランク3に悪化している様子が伺えます。一方、対策後(太線)は曲線が下に下がってきて、再びランク1のマーク(¬)より下に改善されています。ランクの判定基準は風速10メートル毎秒以外に、15メートル、20メートルの合計3水準設けられており、すべてを下回ったときにランク1と判定されますが、これらのランクの評価がこの図1つで1目で判断できるようになっています。

強風発生の累積頻度曲線による風速比ごとの頻度の表現。建設前、建設後、対策後を比較して計画建物建設しても環境が保全されていることがわかる

(3)風速ベクトル
 建設地周辺での風の状態を直観的に把握しやすいように,各測定点での風速をベクトル表示してまとめます。下の図では中央の赤い超高層建物の建設後の風向を表しており、周辺は10階建て程度のビルが立ち並ぶ一般的な高層ビル街となっており、そこにこの建物が建設されると、ビル風が発生する様子がリアルにわかります。ベクトル図では計画建物からの吹きおろしの風によって、建物周辺の街路に、上空の風向とはまるで異なる風向きの強風が発生している状況が詳細にわかります。

 まず、赤で示す建物のすぐ前面の角では真下方向のベクトル(0.71)があり、建物からのビル風の主成分である剥離風が歩道上に吹き降ろしている様子がうかがえます。この風は慣性力が大きいので車道を渡って、交差点向かい側の建物まで到達して、そこから右向きのベクトル(0.78)となっています。このよう高層ビルの足元では、強風が遠くまで到達して吹くことがあります。

 このほか、建設前はビル風と無縁であった、ビルの谷間の道にビル風が発生しています。赤で示す建物のすぐ上側の斜め左下向きのベクトル(0.80)です。ここは建設前には、大通りから1歩入った風の弱い裏通りでしたが、赤い超高層建物の建設後は吹き降ろしの風が狭い街路に集中するため、この建物周辺で最も風の強い場所となっています。風速比とは気象台風速を1と表す風速の比であり、風速比0.8とはほぼ観測所の風速に近い比較的強い風です。この実験で基準とした観測所は、東京管区気象台であり、その風速計は北の丸公園にある科学技術館の搭屋、高さ31.5mに設置されています。このため、風速比0.8とは、ほぼ10階建て建物の屋上と同じ強さの風が常に吹いている場所だといえます。

ベクトル図による各地点の風向風速の表現。縦の通りではまっすぐ順方向の風だが、横方向の大通りや細街路では横向きの風や、逆流も見られる

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