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建物周辺の風環境予測に関する実験的研究

1. 概要

この実験では、建物の高さと幅を変化させた矩形建物モデルを用いて、建物周辺の平均風速の分布を風洞実験により測定し、建物の大きさが変化した場合の任意点の風速予測を行いました。予測は建物形状の高さや幅などの説明変数を用いた回帰式によるものです。その結果、建物周辺の任意点の平均風速が、建物の形状から予測可能であることが確認できました。

2. 実験概要

(1)使用した風洞

測定断面2.62(W)×2.0m(H)のエッフェル型境界層風洞を使用しました。この風洞は下の図のように右の送風機から吹き出した風が一度拡散された後に整流され、縮流し、測定部分に到達するというものです。測定用の直ダクト部分が長いのは、その間に都市の凸凹形状を模擬した建物模型により市街地に適した鉛直方向の風速分布を作りだすためです。このような都市の地表面付近の風環境を実験する風洞を境界層風洞と呼んでいます。詳しい断面は弊社ホームページ「調査内容(風洞のしくみ)」をご覧ください。

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(2)模型

 実験に用いた模型は、縮尺1/400相当の集合住宅模型としました。建物の奥行きは一般的な板状集合住宅のモジュールに合わせてD=15m(37.5mm)を基本モジュールとしました。建物の高さ、幅は奥行き(15m)に対する比(以下h、w)が1〜5の合計11体の模型を用いました。

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図-2 実験模型

(3)実験気流

実験風洞で吹かせた風は、風速の鉛直方向の分布が高くなるほど風速が早くなるという自然の風を模擬しており、風速が高さのべき数に比例することからこのような特性をべき乗則と呼んでいます。今回は、風速が高さの4乗根(√を2回する)に比例する、すなわち鉛直方向べき指数α=1/4の境界層としました。実験気流の性状は図 1に示すようななだらかに変化する風速です。

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(4)実験風速、風向

基準高さ(120m)で8.5m/s、風向角は0°としました。 

(5)測定方法

I型熱線風速計という、まっすぐな電線を電流で加熱してその冷却度を測る原理の風速計を使用し、平均風速は各点30秒間の平均値(基準風速比)を風速比Rとしました。

測定点:測定点を図 4に赤点で示します。測定点の配置間隔は建物近傍ほど短くし、建物の角からの剥離減少などを精密にとらえるようにしました。測定高さは25mm(実物10m相当です)。

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図‐4 測定点

3.  実験結果

(1)平均風速

各点における模型設置前・後の平均風速の比を前後比としました。この前後比の分布を以下のコンター図に示します。

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高さ1、幅1、風向0度 高さ2、幅1、風向0度 高さ3、幅1、風向0度

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4.  実験結果の解析

(1)領域と境界

測定対象エリアを前後比の傾向が類似する6の領域に分類し、領域毎に解析しました。この領域分けをする際には、物体周辺の流れの性状に着目して風速や乱れの傾向が類似するように境界線を設けて分類しました。各領域の境界(線)の位置を図3に示します。境界A、Bは建物のwとhの関数として与えられる曲線であり、すなわち、

・建物による風速増加域

・建物風下側の弱風域

・上記2者の中間にあって風速が大きく変化する逆流域

これら3つの領域の境界を表しています。

これらの境界と風速増加域を表わすパラメータからは、建物規模が大きくなる(wやhの増加)に伴って、

・風上側隅角部の剥離点が建物から離れた位置に移動する

・風速増加域の中心軸の傾きが大きくなる。

・風速増加域の広がりが小さくなる

といった傾向がうかがえます。

このことから、建物によるビル風のエネルギーが大きくなるとともに、風の慣性力の影響が強くなっています様子がうかがえます。

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(2)平均風速の推定

先に分類した6領域毎に、建物のw、hと建物風上側角を原点とする座標値をもとに重回帰分析により建物周辺の風速比を推定しました。建物周辺の任意点の風速比を目的変数とする一次回帰式において支配的な因子と流れの特徴を領域ごとにご説明します。

領域1:測定点の原点、すなわち建物の角からの角度の影響が大きく、建物正面から側方に向かうにしたがって風が加速する流れ場となっています。

領域2:測定点のy座標、原点からの角度、模型正面からの距離の項の寄与が大きくなっています。風が正面から到来して、建物に吹き付けて(風自体は減速する)できる風の淀みである、建物正面の高圧帯であることがうかがえます。

領域3:建物裏側の低風速域です。この領域で風速に寄与が大きいのはhやxと、それからこの領域にできる風速回復点からの距離です。実は建物後方の低風速域は、中心付近が風速が回復してやや大きくなっています。この原因として、建物左右側方から交互に到来するカルマン渦が、建物後方の中心付近で重なるためと考えられます。

領域4:建物側方の風速増加域と建物後方の弱風域の中間にある風速が大きく変化する場所です。強風域から弱風域の正反対の風速性状に変化する領域であることからここでは遷移領域と呼ぶことにします。この遷移領域では原点からの角度の項が支配的であり、風速の等高線が直線状となり、そのような風速コンターが直の角度が回転する形で風速増加域から低速域に遷移しています。

領域5:この領域は、建物角から風速増加領域の中心までの区間であり、吹き降ろしの流れが強い場所となっています。この領域で風速と相関が大きい要因は建物高さhと、それから建物角から風速増加領域の中心まで距離です。風速は建物規模が大きくなるほど速くなりますが、幅よりも高さの影響が大きいということです。また建物角から風速増加領域の中心までの距離も大きくなっています。この距離はwとhから予測可能です。

領域6:原点や風速増加域の中心から各点の距離と負の相関があり、吹き降ろし風が拡散、減衰しています。

(3) 回帰式による推定

 回帰式による推定値は測定値と良い相関を示し、予測誤差は概ね強風域では10%以下、弱風域では20%以下でした。

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5.  まとめ

 塔状、板状の実際に建設される建物に近い基本模型を用いた実験結果より、建物周辺の平均風速が、建物の幅や高さから予測可能であることが確認できました。

建物周りの瞬間最大風速の研究

1. 概要

 高さと幅を変化させた矩形建物モデルを用いて、建物周辺の平均風速及び瞬間最大風速の分布を風洞実験により測定し、建物の大きさが変化した場合の任意点の風速比とガストファクター(突風率、以下G.Fと称する)の回帰式による予測の可能性について検討しました。その結果、建物周辺のG.Fが、建物の幅や高さから予測可能であることが確認できました。

 

2.  実験概要

(1)使用風洞

測定断面2.62(W)×2.0m(H)のエッフェル型境界層風洞を使用しました。

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(2)模型

縮尺1/400を想定した、集合住宅を対象としてD=15m(37.5mm)を基本モジュールとして高さ1〜3、幅奥行共に1の合計3体の模型を用いました。

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図-2 実験模型

(3)実験気流

べき指数α=1/4の境界層を使用しました。実験気流の性状を図 3に示します。

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(4)実験風速、風向

基準高さ(120m)で15m/s、風向角は0°としました。

(5)測定方法

I型熱線風速計を使用し、平均風速は各点30秒間の平均値(基準風速比)を風速比Rとしました。

最大瞬間風速については、観測時間0.25s、に相当する△t=0.5msで(ローパスフィルターは200Hzとし、)123600個の瞬時値を測定し、12個(6ms、実時間3秒に相当)毎の平均値206個(1236ms、実時間10分に相当)の最大値を瞬間風速としました。

測定点:測定点を図 4に示します。測定高さは25mm(実物10m相当)。

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図‐4 測定点

3.  瞬間最大風速の解析手法

建物周辺の瞬間最大風速の出現確率がFisher-Tipepet I型分布に近似できることが指摘されています。このため同分布の累積分布関数を用いて、前項で得た各点50個の10分間最大瞬間風速に基づく90%非超過確率風速を求め、この期待値を最大瞬間風速として予測解析を行いました。

 

4.  実験結果

 各点における瞬間最大風速を平均風速で基準化してGFとして求めました。この分布を以下のコンター図に示します。GFの値は建物風上側と、それから風速増加域を含む側方域で小さく、その値は1.4〜1.7程度となっており、建物高さ毎にほぼ一定値となっています。

 一方、建物風下側では、GFは1.6〜3程度まで大きくなっています。これは建物によって発生したカルマン渦が建物風下側の乱れを大きくしており、かつ風速が低減するためと考えられます。

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図-5-1高さ1、幅1、風向0度 図-5-2高さ2、幅1、風向0度 図-5-3高さ3、幅1、風向0度

 

5.  G.Fの測定値の分析結果

 G.Fの測定値は1.7〜8.5の間に分布し、大部分の範囲で既往の報告例で示されたG.F=A×R-aの関係に近似しました。

 また、G.Fの推定を建物寸法や前後比をもとに行ったところ、推定値は測定値と高い相関を示しました。説明変数として影響力の大きい因子は、風速比、原点からの角度、原点からの距離などでした。

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参考文献

1 村上、森川:風環境工学における風洞模型実験法に関する研究−風速・風圧の変動性状の再現を中心として−、第34巻4号、平成6年8月37-39p

2 村上、岩佐、森川:市街地低層部における風の性状と風環境評価に関する研究(Ⅲ)居住者の日誌による風環境評価と評価尺度に関する研究、日本建築学会論文報告集、第325号1983.3

 

6.  まとめ

 塔状の基本模型を用いた実験結果より、建物周辺の最大瞬間風速が平均風速が、建物の幅や高さから予測可能であることが確認できました。

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