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ビル風の種類

ビル風の種類は、ビル風の成因(発生原因)と形態によって次の6つに分類されます。

  1. 剥離流
  2. 吹き降ろし
  3. 逆流
  4. 谷間風
  5. 開口部風
  6. 街路風
  7. 渦領域

剥離流 ― ビル風の主要因

 剥離風とは、建物に当った風が向きを変えて、建物の角部を過ぎて、建物から剥がれて流れ去る風のことを言います。この建物角部から剥がれた風は、その周囲の風よりも風速が大きいためビル風の主要因となっています。剥離流がなぜ「付着」しないで「剥離」するかというと、建物の風上側の領域が空気の高圧帯に相当し、そこから勢いよく風が吹きだされるからです。そして風が建物角から吹き出すとき、外向きの慣性力が生じるため、建物の外側に向かって斜めに吹き出します。この時建物の側面には逆流が生じていて、前述の勢いよく吹き出した風は建物側面の緩やかな逆流に対して、流れを剥ぎ取るような形で吹き出していきます。このため剥離流の名前がついています。
 図-1は、中央にある15階建て相当の建物(H45m,W15m,D15m)に、左方向から風が吹きつけた場合の建物周りの風速分布(高さ1.5m)を表しています。建物の左右(図中の上下)には黄色、赤からなる勾玉のような形の風速増加域が発生しています。この図では、剥離風が建物の正面から、速度を増して左右の建物角を通り過ぎ、向きを変えながら側方に流れ去る様子を見ることができます。注意してみると、この風速増加域(黄色)と建物(灰色)の間には薄い青の低速域が存在しており、これが建物側方の逆流域になります。剥離風はこうした、逆風から空気をはがすように流れ去るためこの名がついています。
 風速値の凡例は、図の右の方にあるカラーバーで表しており、1.5以上が赤、0.5以下が青となっています。風速は同じ高さの流入風速を1とする比で表しています。風の向きは白矢印のベクトルで表しています。
 下の図はクリックすると、拡大図が現れて風向が360度変化した場合の風の流れを見られ、剥離の様子がより詳しくご覧になれます。

図-1 15階建て建物(中央)の周りの風速分布(クリックすると動画が見られます)
 

 下の図-2ではさらに詳しく「剥離」の様子を拡大して示しています。図の左上から斜め45度に風が吹きいた場合の風速コンターです。前述の図-1と同じく風速の最大を赤、最低を青として、途中を分割して色で表しています。建物の両角には赤い風速増加域があり、その下流側に風が吹きだしています。赤い楕円形に近い風速増加域の向きは、建物の対角線と並行ではなくやや外向きに偏向しています。これは建物の角から吹き出すときに外向きの慣性力が働くためです。
 一方、建物の下流側には青色のよどんだ風が存在していて、風速増加域が吹き出す建物角に向かって逆流が生じ、建物側面と風速増加域の間は、等高線が密となり大きな風速差が生じています。このことからも剥離流の様子がうかがえます。
 下の図-2は、クリックすると、拡大して建物角に接近し、剥離や建物側方の逆流の様子がもっとはっきりと見られます。かつ、風向きを変えた場合に剥離や逆流がどうなるかも詳しく表しています。

 図-2 建物角の下流側でみられる風の剥離現象(クリックすると動画が見られます)

吹き降ろし

 風は普段は水平に吹いていますが、建物に当たると、建物高さの6〜7割のあたりで上下左右に分かれます。その1つが下方向に向かって、建物の風上側の壁面に沿って上から下に向って流れる風となります。これがいわゆる吹き降ろし風です。吹き降ろしの現象は建物が高層であるほど顕著です。
 下の図-3では、左から吹いてきた風が黒い高層建物(20階建て相当)にぶつかり、建物風上側の前面(図中建物の左側)に吹き下ろしの風を作る様子を鉛直断面図で表しています。図をクリックすると拡大動画で白いベクトルが見られます。
 この吹き下ろし風は、実はあまり風速としては大きくはなく、地面に到達すると逆流となって風上方向に吹いていきます。(逆流についてはこの後「逆流」の項でご説明します)そして建物側方では下向き成分はごく小さく、ほとんど水平に近い流れとなっています。

図-3 建物風上側の前面に吹き下ろしの風
 

ここで整理しておきますと、一般に吹き降ろしの風がビル風の原因と考えられていますが、実際の流れの現象はやや異なるということです。

  • 建物前面の吹き降ろしの風は風速が小さく、ビル風の原因となるような風の勢いは持っていない。
  • 一方、ビル風が発生している建物の側方では、風向はほとんど水平に近く、「吹き降ろし」と呼ばれるような鉛直向下向きの成分はごくわずかにすぎない。(風洞実験、コンピューターシミュレーション共にそうです)

 ビル風の実態が、「吹き下ろし」や鉛直方向下向きではないことを図-4に示すベクトル図で、風速増加域の風速コンターを観察して、確認してみましょう。下の図は高層建物に左から風が吹きつけた場合の水平面の風速コンターです。クリックすると風速増加域に接近して拡大しながら、かつ地上0.5mから12mまでの水平断面の風速・ベクトルをスキャンしながら動画でご覧になれます。風の向きは各点の白いベクトルで見られます。ベクトル自体は、x,y,zのすべての風速成分を反映した3次元での表示となっています。

 ビル風が最も早い、すなわち風害が発生しやすいのは建物の風上側の角を過ぎたあたりです。この風速増加域のベクトルは、風速は大きい(ベクトルは長い)ものの、向きはごく緩やかな下向きのベクトルとなっているにすぎず、パッと見た感じはほとんど水平に近い感じです。いわゆる歩行者の頭上から地上に吹き付けてくる「吹き下ろし」の印象とは異なります。このように、ビル風の正体はほとんど水平に近い風であり、よって対策も鉛直方向の面で構成されたフェンスなどが主体となります。

図-4 地上から上空までの風速・ベクトル水平分布(風速が大きいの建物の角を過ぎたあたり)

 次に、図-5では、前述の建物風上側前面に近い、建物から少し離れた鉛直断面のコンターを表しています。コンターに表示しているのは風速とベクトルです。風に正対した建物の前面では、風が建物によってせき止められて青色の低風速域となっています。この部分では空気の圧力が少しだけ高くなっています。これは、風の速度エネルギーが建物によって止められて、その結果、速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されて高圧帯となったためです。(ベルヌーイの定理と言います)このわずかに高い圧力の空気が建物の角から吹き出すとき、今度は圧力エネルギーから速度エネルギーに変換されます。これが前述の剥離流の実態です。
 図-5の動画では、同一断面を視点の向きを変えて見ています。このコンター図からは、建物の風上側前面にできた風の低速域(淀み)から、建物の側方と地面、軒の4方向に向かって風が広がっていき、そして建物の両側の角を過ぎたあたりで赤や黄色の風速増加域を形成している様子が確認できます。このうちいわゆる「ビル風」として感知されるのは、地上付近のベクトルだけですが、その向きは風速の大きい赤いコンターの部分では、ほとんど水平に近い向きとなっています。

図-5 建物風上側前面には低風速域ができている
 

以上のことから、ビル風の原因は建物に到来する風が建物風上側前面に作る高圧帯が原因となり、そこで蓄えられたエネルギーが建物角から放出されるときに「ビル風」となるということです。この高圧帯の周囲から風が吹きだした、地上付近の一部の風が剥離流を形成して「ビル風」と認知されます。

逆流

 吹き下ろしの風が地面に到達すると、一部分は地面に沿って上空の風とは逆に風上に向かいます。この流れは逆流と呼ばれています。高層建物の前面に低層建物がある場合に逆流が顕著となります。ただし、逆流は剥離風などに比べて比較的風速は小さいと言えます。このため単独ではビル風問題となる可能性は低いものと考えられます。
 図-6では高さ45m(15階建て)建物の前面に高さ10m(3階建て)の低層建物がある場合です。建物の中心付近で逆流が顕著となり地上付近で風速が増しています。このため従前の風環境と比べると変化が感じられるに違いありません。ただし風速は青か黄緑であって建物側方の剥離風などに比べて風速は小さいと言えます。

図-6 15階建て建物の前面に3階建ての低層建物がある場合に生じる逆流

谷間風

 建物が2棟近接して存在する場合には、速い風が建物の間に生じることがあります。この原因は、それぞれの建物からの剥離流が重ね合わさって増速するためであり、この現象は谷間風と呼ばれています。谷間風は、2棟のビルで形成される「谷間」の出口付近で風速が速くなります。
 図-7は、高さ45m(15階建て)建物が2棟並んで立つ場合です。建物の2棟の谷間の出口付近で風速が最大となっています。この原因は谷間の手前では周辺と圧力は変わらないものの、谷間の入り口から出口、さらにその下流にかけての圧力が負圧になり、風が谷間から吸い出されるためと考えられます。

図-7 15階建の建物が2棟並んで立つ場合の谷間風

開口部風

 建物に設けられた開口があると、建物に到来する風によって建物前後に圧力差が生じます。この結果、建物下層にピロティーなどの開口部では圧力差によって強風が吹き抜けやすくなります。片廊下型のマンションでは、ベランダ側の窓と玄関ドアを開放すると微風の日でも強力な通風が得られることがあり、同様な現象と見ることができます。
  図-8は、高さ幅ともに45m(15階建て)の5建物に15m角の開口部がある場合です。このケースでは開口部の手前は陽圧、開口部の下流側は負圧となります。このためこの建物前後の圧力差が原動力となって、ダクトに流れが生じるような原理により、開口部の全ての場所で風速が速くなります。そして、風に慣性力が付きますので、建物の後ろ側の離れたところまで到達しています。

図-8 15階建て建物に15m角の開口部がある場合の開口部風

街路風

 市街地では街路や路地に沿って風が吹くことが多くあります。この原因は次の2つと考えられます。

  • ビルの壁面が風の抵抗が少ないダクトを形成し、風の速度エネルギーが発達しやすい。
  • 街路と風の方向がわずかに違う場合、街路の片側に添って風が集中する。(街路風として成長する)

 図-9では中央の街路に対して、まっ直ぐな風と角度を付けて斜めに吹く風を示しています。斜めの風が街路の反対側で建物に添って街路風として成長している様子がうかがえます。

図-9 中央の街路に発生する街路風

渦領域

 風の到来方向に対して、建物の背後(風下側)では建物の左右の角から発生した渦が交互に発生し、巻いています。このため渦領域(ウェイク:航跡)と呼ばれています。渦領域は風の向きや風速の変化はありますが、平均風速でみると風速の弱い場所です。

 下の写真は円柱の後ろ側に発生する渦領域を示したものです。

enchu_uzu.jpg (700×239)

下の図はコンピューターシミュレーションで、建物の下流側の渦の流れを表したものです。

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