ビル風風洞実験とは
実際の風を模擬した境界層風洞の中に1/200〜1/500程度の縮尺の建物模型を置いて、建物周辺気流を作り出し、建物周辺の各地点の風速を精密風速計で測定します。その後、気象データを加味して調査地点での年間の強風の発生頻度を求めます。
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実際の風を模擬した境界層風洞の中に1/200〜1/500程度の縮尺の建物模型を置いて、建物周辺気流を作り出し、建物周辺の各地点の風速を精密風速計で測定します。その後、気象データを加味して調査地点での年間の強風の発生頻度を求めます。
模型実験による建物周辺の気流、風環境評価ランクが正確にわかりますので、精度を求められる場合や説明根拠を必要とする報告に最適です。模型実験はコンピューターシミュレーションに比べて精度の高い予測法です。
防風対策の検討では、条件を変えて何回でも検討できます。
風洞実験では1/300〜1/500の地域模型を作成し、風洞に持ち込んで、建物周辺の風速を計測して風速分布を予測します。風洞実験は自然の風の現象をそのままスケールダウンして模擬しているため、コンピューターシミュレーションなどに比べて信頼性が高いといわれています。
解析範囲は、結果を報告する範囲である3Hの範囲を市街地模型として作成します。
モデル作成は次の3ケースとし、風向は16風向で計算します。
風環境評価は、村上法でランク1〜4を表示します。
防風対策は、植栽、フェンスのいずれも可能です。
初期結果として、上記1〜2の風速、風環境評価結果を風洞実験開始後1週間以内にご報告します。さらに防風対策を行い検討し、最終的に対策案が決定しますと、その時点から3週間で報告書を作成します。
計画建物のほか、周辺の地域模型を正確に再現します。スケールは1/300〜1/500程度となり、実験の目的に合わせて最適な寸法、範囲といたします。材質は一般的には発泡スチロール等で制作します。下の写真は、周辺模型が木製、本体模型が樹脂製の場合(別途仕様)です。材質が変わっても実験の精度には影響ありません。
(1)周辺建築物,市街地域等の再現範囲対象建築物の周辺は広く再現し、少なくとも対象建築物の影響を考慮すべき範囲内の市街地域等は再現します。
(2)地形の再現
地形の凹凸,傾斜等は地表面付近の風速に与える影響が大きいため、模型上の高低差が数mmと極めて小さい場合を除いて、再現することが望ましい。そして地形を再現した場合,ターンテーブルと風洞床面との境界部分に高低差が生じることが多く,この境界部分テーパー型模型を付加します。
(3)模型の縮尺率
模型の縮尺率は,一般的には1/300〜1/1000としますが、使用する風洞測定部の断面形状,ターンテーブルの大きさ,模型化の再現範囲,閉塞率,壁効果,風洞気流の相似条件等を考慮しながら決定します。
1.壁効果 模型再現範囲はターンテーブルあるいは測定断面内に収めます。ただし,風洞壁面の近くでは風洞気流は壁面の影響を受け気流性状が異なるため(壁効果),測定範囲が壁面近くまで至らないようにします。
2.鉛直方向の気流の勾配 測定位置が風洞床面に近付きすぎると,摩擦のために生じる床面近くの境界層の影響が強くなり,測定位置での気流の再現が難しくなるため,縮尺率が小さくなりすぎないようにします。
3.測定機器(風速計)の測定部位の位置 通常1〜2mm程度であり,縮尺率が小さくなりすぎると,設置不可能になります。
4.閉塞率 閉塞率がある程度大きくなると誤差が急激に増大するため5%〜10%以下とします。ただし,対象建築物の模型の閉塞率に占める割合が小さい場合,しかも,実験の目的が建設前後あるいは対策後の風環境の相対的な変化の把握である場合は,閉塞率が多少大きくてもかまいません。
下の図に示すような風洞実験設備を用いて評価します。風洞では次の手順で実験します。
送風機で風を作る。拡大しメッシュで均一化、整流し、その後、縮小する。床面においた抵抗物で地上風に近い鉛直方向風速分布(勾配流)をつける。測定ターンテーブルおかれた模型を回転して16風向の実験を行う。(1)運動学的相似
風洞気流に関しては,実際の気流条件とできる限り相似側を一致させることが望ましく、以下の指標を考慮します。
・平均風速の鉛直分布
・境界層高さ
・粗度長
・乱れのスケール
・乱れの強さ
ただし、測定の目的が平均風速の場合は,平均風速の鉛直分布と境界層高さあるいは粗度長を考慮すれば有効なデータを得ることができます。しかも平均風速の鉛直分布を指数則に基づいて再現すれば,粗度長についての配慮はそれほど必要としません。乱れのスケールや乱れの強さの相似則は変動風速や最大瞬間風速等を測定目的とした場合のものだと考えればよく、一般的な風環境評価では平均風速の測定となるためそれほど影響はないと考えてよいでしょう。
境界層高さなど高さ方向の模型化範囲は,超高層建築物等の場合は建築物高さの1.5倍以上,比較的低層の市街地に関しては市街地の建築物高さの2〜4倍程度までの、いずれか高い方とします。
(2)実験風速の決定
測定機器の分解能や誤差の大きさを考慮して平均風速5〜15m/sの範囲で実験は行います。一方、レイノルズ数は,実現象と一致させることは事実上困難であり、建築物の形状が角張っている場合は建築物周辺の流れの状態に大きな差異がないことから,レイノルズ数が一致しなくても有効なデータを得ることができると考えてよいでしょう。
(3)境界層(鉛直方向の風速分布)の作成
境界層風洞では、上空にいくほど風速が大きくなり、一定以上の上空は風速も一定になるという自然の風を作り出します。境界層風洞では、鉛直方向の平均風速分布が自然の風と相似させるため、風洞入口にスパイヤーという槍状の障害物を置いたり、床面にラフネスブロックと呼ぶサイコロ状の突起物を設置して、空気の乱れを発生させて、地上付近の風を作り出します。
下の写真は、風洞の下流側の出口から、風の流れの上流に向かって、気流とは逆向きに内部を見通した写真です。手前の白い風洞模型の奥に床面にたくさんの突起物が設置されており、このラフネスブロックは地上付近の建物を模擬して、細かい乱れを発生させています。模型の最も近くには木製の矩形建物を模擬したブロックが等間隔で並べられており、その向こう側には金属製の円筒形のブロックが並んでいます。こうしたブロックは高さを調節することで地表面の抵抗を変えて、後述する田園の地帯の風や市街地の風を作り出します。また一方、風洞の奥には水色の縦の槍状の障害物が縦に大小各5、6本並べられています。これがスパイヤーと呼ばれる空気抵抗器であり、こちらは地上付近から上空までの風速分布と乱れを発生させます。
自然の風は、鉛直方向の平均風速分布は、風速の比が高さの比のべき乗に比例するという、べき法則あるいは、対数法則に従うことが観測結果や理論から明らかとなっています。
下図は、地表面粗度区分Ⅱ(田園地帯)の地上10mでの平均風速V₀を基準として表示した場合の高さ方向の風速分布です。すなわち風速と高さの関係は下図に示すように、上空ではどのような地域でもほぼ同じ風速を示しています。しかし、高さが低くなると、市街地では高層建物の凹凸形状などの抵抗によって、地上に近付くにつれて風速が大きく減衰します。一方、海上では海面の凹凸がほとんど無いため風速の減衰は小さいのものとなっており、海面付近まで強い風が保たれます。こうした地域によって異なる境界層の鉛直方向の風速分布を風洞実験で作り出すため、前述のスパイヤーとラフネスブロックを駆使して風を調整しています。
この鉛直方向の風のべき法則、風速Vと高さZの関係分布は下記の式のように表すことができ、このαをべき指数と呼んでいます。αは地表面粗度区分(地表面の凹凸の状態)に応じて決まり、住宅地では0.2、中層市街地では0.27程度となっています。
Vz₁/Vz₂ = (Z₁/Z₂)α
地表面粗度区分 | |||||
I | Ⅱ | Ⅲ 住宅地 | Ⅳ 中層市街地 | V 高層市街地 | |
平均風速分布べき指数α | 0.10 | 0.15 | 0.20 | 0.27 | 0.35 |
(1)測定項目の選定
実験では測定項目として各測定点および基準点での平均風速を測定します。これは風環境評価方法が10分間平均風速に基づいて行われるためです。また、風速データは絶対値ではなく風速比(測定地点の平均風速÷基準点での平均風道)として扱います。
平均風速は、実験結果と10分間平均風速の気象データを組み合わせて、測定地点における風速の超過確率や累積頻度を求めたり,確率的評価方法に基づき測定地点での風環境評価を行います。
(2)測定点の配置
測定点は、各地域の風を代表するため、地区ごとに1箇所選定します。測定点の間隔は、地点ごとの差をとらえるため、対象建物近傍では10〜30m間隔、対象建物から2Hに近い場所では50〜100m間隔とします。
(3)測定機器
1)風速の測定
建物の周辺での気流は3次元的な複雑な流れになっており、代表的な測定機器としては,サーミスター風速計,熱線風速計(I型熱線風速計,X型熱線風速計,3次元熱線風速計等)が使用されます。下の図はサーミスター風速計での測定の様子です。
2)風向の測定
流れの可現化に基づく判定・測定方法と,計測機器による測定などがあります。
可視化による判定は、測定点に旗やタフトを設置したり,煙等を発生させてその風向や流れ状況を観察したりして行われます。また,測定時間に応じた露光時間で写真撮影を行い,写真に記録されたタフトや旗の変化より求めることも行われます。
測定データを電気信号で得る測定機器としては旗式風向計があります。また,熱線風速計を利用する方法もあります。
(1)測定時間
平均風速を測定するため、測定時間の総和は15〜40秒程度とします。データが長周期変動するため,測定時開か短いと測定結果にバラツきが見られるからです。
(2)サンプリング間隔
平均風速を測定目的とする場合は、測定時間内のサンプリングデーダ数が200個程度以上になるようにサンプリング間隔を決定します。
建設後に風環境が悪化する場合は、建物周辺の緑地に防風植栽を設置するなどの対策によって、風環境の緩和を図ります。風洞実験では、樹木の形状を模擬した物体を樹木の位置に設置して、風下側の風速が低減することを確認します。この時樹木の高さ、幅については現実的な樹木の成長を推定して安全側となるように注意します。
下写真に示す模型実験では、交差点に建つ塔状建物の足元の風環境が悪化することが判明しました。計画地前の赤点で示す測定点で、建設前後で村上法のランク2→ランク3に悪化することがわかりました。このため、建物からの剥離風を緩和するため、高さ8mの高木を植えるような対策となっています。これによって、計画建物周辺の歩行者環境は住宅街の風環境に改善されました。
(1)風速比 風速比(測定点での風速÷観測所風速)は、各測定点での建設前,建設後,対策後の風速比をレーダーチャート上で同一図に重ねて示します。下の図では建設前(点線)に比べて、当地の卓越風向である北北西や南西の風向において、建設後(実線)のレーダーチャートが大きくなっており、風速が増すことを表しています。そして対策後(太線)はレーダーチャートが小さくなり、建設前同等まで改善される様子がわかります。このように風速比レーダーチャートでは測定点毎の風速の変化や改善状況が感覚的に把握することが可能です。
(2)風速の超過確率,累積頻度 風環境の評価を行う場合,どの程度の風速がどの位の割合で吹くかが評価の判断基準となるため,統計処理された風速のデータとして,各測定点での風速の超過確率(発生頻度),累積頻度(非超過確率,累積確率)を表します。下の図では対策前(点線)に比べて建設後(実線)は累積頻度を表す曲線が上に移動し、風環境評価がランク1からランク3に悪化している様子が伺えます。一方、対策後(太線)は曲線が下に下がってきて、再びランク1のマーク(¬)より下に改善されています。ランクの判定基準は風速10メートル毎秒以外に、15メートル、20メートルの合計3水準設けられており、すべてを下回ったときにランク1と判定されますが、これらのランクの評価がこの図1つで1目で判断できるようになっています。
(3)風速ベクトル 建設地周辺での風の状態を直観的に把握しやすいように,各測定点での風速をベクトル表示してまとめます。下の図では中央の赤い超高層建物の建設後の風向を表しており、周辺は10階建て程度のビルが立ち並ぶ一般的な高層ビル街となっており、そこにこの建物が建設されると、ビル風が発生する様子がリアルにわかります。ベクトル図では計画建物からの吹きおろしの風によって、建物周辺の街路に、上空の風向とはまるで異なる風向きの強風が発生している状況が詳細にわかります。
まず、赤で示す建物のすぐ前面の角では真下方向のベクトル(0.71)があり、建物からのビル風の主成分である剥離風が歩道上に吹き降ろしている様子がうかがえます。この風は慣性力が大きいので車道を渡って、交差点向かい側の建物まで到達して、そこから右向きのベクトル(0.78)となっています。このよう高層ビルの足元では、強風が遠くまで到達して吹くことがあります。
このほか、建設前はビル風と無縁であった、ビルの谷間の道にビル風が発生しています。赤で示す建物のすぐ上側の斜め左下向きのベクトル(0.80)です。ここは建設前には、大通りから1歩入った風の弱い裏通りでしたが、赤い超高層建物の建設後は吹き降ろしの風が狭い街路に集中するため、この建物周辺で最も風の強い場所となっています。風速比とは気象台風速を1と表す風速の比であり、風速比0.8とはほぼ観測所の風速に近い比較的強い風です。この実験で基準とした観測所は、東京管区気象台であり、その風速計は北の丸公園にある科学技術館の搭屋、高さ31.5mに設置されています。このため、風速比0.8とは、ほぼ10階建て建物の屋上と同じ強さの風が常に吹いている場所だといえます。
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