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大阪市淀川エリア調査

 今回当社が行った調査は、大阪市淀川北部の住宅団地の建て替えに伴う風環境評価です。大阪市の中心部は淀川に沿って沖積低地が広がっており、河川に接する区が多いです。この付近は古くから住宅地や工業用地に供されてきており、勤労者向けの公営住宅がたくさん見受けられます。今回の建替え計画は、老朽化した低層の公営団地を新しい高層集合住宅へと作り替えるものです。計画物件の周辺には、民間の低層住宅や大規模集合住宅が密集して建設されており、それらへの建設環境問題が心配されました。 

 この地域は、地盤面の高さを色分けした上の標高図が示すように、北東から南西方向に下ってゆく淀川と、その堤防によって隔てられた右岸地域、左岸地域の3つのエリアから構成されています。淀川右岸地域は淀川の河川の水面より低い天井川の地形を形成しています。この地形に高層建築が加わることによって地域の風が形成されています。概ね鉄道の路線や駅周辺は高層建築が多く、一方それらから離れた街区の中心部分は低層建築が主体となっています。そしてエリアの中央に淀川が流れ、その方向が地域の風の方向と一致しているため、淀川の河川敷を利用して風が吹き抜けやすくなっています。

 今回風環境調査を対象とした地域は淀川右岸の鉄道路線に囲まれた沖積低地地域にあり、周辺は民営の低層住宅や公共施設が密集しており、すでにいくつかの高層市営住宅も建設されています。本計画地内には以前は低層住宅団地が存在していましたが、調査時点では取り壊されて更地となり、仮囲いで囲われていました。周辺には下の写真で示すような同様の既存住宅がまだ存在しています。

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 この更地となった用地に高層の板状建物による集合住宅が複数棟建設されることが計画され、周辺の風環境の変化が予想されました。残念ながら新しい建物についての情報は守秘義務がありますので、ここで申し上げることはできません。

 調査はまず、次の写真に示す計画地直近エリアの道路に沿って、住宅の建て込み具合や街路樹など風環境要因の踏査から始めました。隣接する既存の公営集合住宅も参考にして、建設地の状況を思い浮かべながらくまなく調査しました。

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 ありがたいことに、やや離れた地域には次の写真に示す、計画建物によく似た高層板状の公営住宅も存在し、計画建物をイメージすることができました。風環境コンピューターシミュレーションする時には、こうした建物の規模や、周辺の建物状況をどうモデル化するかが評価のポイントとなりますので、現地踏査が欠かせません。

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 2番目に大事なのは計画地を取り巻く中高層建物の存在や地形の起伏です。これら建物、地形は建設前後共に変化せずに存在し、こうした要因によって計画地に流入する風がほぼ決定されるからです。周辺に存在する商業施設や大規模な公共建築を調べて、それぞれ高さを計測して記録しました。計画地の南側には、高層建築の大規模団地が既に存在し、卓越風向からの風を遮ってくれることが予想されました。

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 大阪市の風は下図に示すように、アメダスの風配図から西南西と北の頻度が高いことがわかっています。そのため、それぞれの方向にどのような建物が存在するか調査しました。ちなみに大阪府では、近畿地方の地形の要因を受けて、北に行くほど風配図の形は「右肩上がり」となり、南に行くほど「水平の楕円」に近くなる傾向があります。

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 その結果、最も強風頻度が高い西南西の風においては、こちらの方角には前述の高層の公営住宅のほかに鉄道高架橋もあり、地上風を遮って緩和してくれることが予想されました。一方、北方向は低層住宅の密集地域のため、遠くまで大規模な建築物がなく、風が直接到達します。このため遠くまで、大規模建物の建設予定がないか調査しました。すると新たに着工されている地図にはない大規模商業ビルを発見しました。建築計画の表示板を参照して、建設前の周辺建物として入力することにしました。

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 次に計画地に近い既存の公営住宅の上層階に上って、共用廊下から周辺の建物の状況を確認しました。近くの足元には低層住宅が密集し、遠くには淀川があり、さらにその遥か向こう側に超高層ビルが立ち並ぶ様子も見られました。別の方角には、やはり集合住宅が接近して存在しています。

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 周辺の建築物の調査はこの程度で一段落し、もう一度計画地周辺に戻って直近の建物の詳しい調査を行いました。建設地に隣接する公共建築のピロティーや、街路樹、民有地に植えられた植栽は、計画地直近エリアの風環境に直接的に影響します。古い住宅街であることから当初に植えられた樹木はかなりの大きさに成長しており、風の緩和に寄与していると考えられます。

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 このあとはさらに外側を取り巻く地域を順次車で移動しながら調査してまいりました。以上のような現地踏査によって周辺地域の状況は把握できたため計画地を後にしました。

次に向かったのは地域の風を観測している大阪市及び周辺自治体の風向風速の観測所です。本計画地の5km以内には次の5つの観測所がありました。風環境調査では、上空の風を象データから読み取る必要があり、その最適な観測点としてもっとも計画地に近いこれら5つの観測所から1つ選定する必要がありました。選定の根拠は、計画地と地形が似ていること、観測所が建物によって遮られていないこと、出来るだけ距離が近いことなどです。所在地と風速計の高さはそれぞれ次のようになっています。

 

  1. 吹田市川園ポンプ場 吹田市南高浜町33−1                 16m
  2. 吹田市西消防署         吹田市江坂町1丁目21−6               19m
  3. 豊中市立千成小学校豊中市千成町2−2−65                 8m
  4. 大阪市立野中小学校 阪市淀川区野中北1−11−26             23m
  5. 大宮中学校               大阪市旭区中宮4−7−11          17m

 

吹田市川園ポンプ場

 この観測所は、淀川の北側を流れる支流安威川の右岸の吹田市川園ポンプ場内にありました。周辺に高層建築はほとんどなく、住宅密集地域となっており、基準風の目安となる地表面祖度区分はⅢに相当する地域でした。風速計は建屋の屋根上にあり、高さ16mということから上空の風を問題なく計測可能と考えました。この測定局は吹市南浜町33−1にありましたが、平成30年8に測定終了しています。

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吹田市西消防署

 次に向かったのは、市街地にある吹田市西消防署観測所です。この時点では所在地は吹田市江坂町1丁目21−6にあり、消防署の西隣の中層マンションの屋上に設置されていました。風速計高さが19mあり、道路沿いに建ち並ぶマンションの軒の高さより上にあるため、ほぼ上空の風を計測可能と考えました。現在この観測所は移転されて吹田市立豊津中学校にあります。

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豊中市立千成局

この測定局は淀川の北側を流れる神崎川の右岸にあり、阪急神戸線と宝塚線に囲まれた住宅密集地域の豊中市立千成小学校の校庭のはずれにありました。校庭は南東側を走る道路に接しており、その道路際に近いところに高さ8mの鉄塔の上に風速計が設置されていました。校庭や道路に沿っているため、障害物のない平地が数100m続くことになりますので、こうした広い平面に沿って到来する風が増速している可能性があります。粗度区分Ⅲの地域と思われますが、局部的に風速が増す可能性がありました。

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大阪市立野中小学校

 この小学校は新大阪からほど近い山陽新幹線の鉄道橋のすぐ北側にありました。風速計は、下の写真の中央であり、右側に見える校舎の突き当り、東端の塔屋屋上23mに設置されています。この校舎の西方向から北方向にかけては高層マンション(11F)が存在しており、建物によって到来する風が遮られている可能性が高いと考えられます。

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大宮中学校

 淀川を南方向に渡って、大阪市旭区中宮にある大宮中学校測定局に向かいました。この測定所は市街地の学校の屋上にあります。あまり大きくはない敷地に、運動場を囲むように複数の校舎が配置され、北側にある3階建校舎の塔屋屋上17mに風速計が設置されていました。この風速計は北方向にある城北公園通りから見通せる位置にありGoogleストリートビューからも確認できます。この測定局は、問題なく上空の風を計測していると考えられるため、すでに過去に何度か他物件の調査でも観測データを利用しております。

 事務所に戻ってからは、上記の調査で得られた建物データを、コンピューターシミュレーション上のモデルに作りこんで、市街地の風の流れを計算します。この時に問題となるのがモデルの計算の領域をどの程度大きく設定するかです。領域を大きくすると広い範囲で精度を高めることができますが、一方で計算時間もかかります。逆に領域を小さくすると、流入した風がすぐに解析対象である中心領域に到達してしまうため、正しい流れ場が解けません。

 そこで事前にテストをするため、三段階の大きさの領域を設定して、それぞれ中心の風速がどうなるかを確認してみました。その結果が下の計算結果1、2、3です。

 領域の一辺の長さは、コンターの部分がそれぞれ1.5km、1km、500m四方となっています。計算結果1、2、3を左側から並べてあります。その結果、計算結果1では河川の部分の風速は赤く大きく表示されており、風速が大きいことが印象的です。一方計算結果3は、逆にコンターの赤の範囲は小さくなり、風速は比較的小さいように見えます。一見、風速は計算結果1の方が小さいようにも見えますが、実はこれは目の錯覚で、その判断は誤りです。

 今度は逆に計算結果1,2,3の中心領域の180m四方だけを取り出して同じスケールで下図に並べて表示してみました。コンターのスケールは先ほどと同じです。

 すると、何と計算結果1より2、3のほうが風速が大きくなっていることがわかります。つまり、計算領域が小さくなって、河川が領域に含まれなくなると、もともと河川を利用して吹き抜けていた風が、無理やり市街地に向けられることとなり、目的とする中心エリアの風速が大きくなってしまうということです。逆に正しい風速を求めるには、地域の地形を広域に作成して、河川の上を勢いよく吹き抜ける風を計算上で正確に再現することです。そうすることによって、比較的穏やかな市街地の風を正しく予測することが可能です。ただしこうした広域での計算を行うためには、計算量が増すため、高速のコンピューターを用意する必要があります。当社では、高速のワークステーションを複数用意して精密なモデルを作って丁寧に計算することにより、正しい風速を求めるように努めております。

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