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参考までに、風洞実験の実態について、一般的には風洞実験はこのように行われています 。
1. 風洞気流
現実の風の特性、すなわちほぼ高さの4乗根に比例するという鉛直方向の風速分布を再現するため、風洞気流として乱流境界層を形成させて実験を行なっている例が圧倒に多いようです。
しかしその一方で、乱流境界層とした場合とそうでない場合との差は実用的に問題とならない場合もあり、一様流で実験している例も見られます。(建物高さの低い場合と考えられます。)
2. 境界層高さ
鉛直方向に風速が変化する範囲(境界層)の高さは風洞の高さの1/2~8割程度とされています。
3. 実験風速
風洞実験をするときの風速(建物の上空に相当する高さの基準風速)は、ほぼ5~10m/sの風速範囲内で行われています。この理由は
①実験に用いる風速計の分解能(測定精度)を高めるため
②風洞の消費電力を低減するため
の2点です。
風速計は、その精度が測定限界の上限値に依存しているため、低風速範囲では実質的に精度が低下します。このため実用的には風速5m/s以上で使用する必要があります。そして一方強風域の測定では風速比が2~3となる場合もあり、風洞内の基準風速が10m/sなら、20~30m/sに到達してしまうこととなり、ほぼ風速計の測定上限に相当してしまうため、これ以下で使用する必要があるということです。
風洞の使用電力は風速の3乗に比例するため、基準風速が10m/sを超えると急激に消費電力が大きくなり、また騒音も大きくなります。連続的に使用するには10~15m/s位が限界です。
4. 自然の風を模擬する方法
自然の風を模擬するには、風速分布と乱れの強さを鉛直方向に変化させる必要があり、この鉛直方向の分布を作るため、各実験者が創意工夫して行っているようです。
一番多く用いられる手法がラフネスブロックという風洞の床面にサイコロ状の建物模型を等間隔に並べる方法です。実験模型に到来する風が風上の地点から市街地等の建物の影響によって鉛直方向の風速分布ができていくという、都市のモデルを行ったものであり納得しやすいものです。
二番目はスパイヤーといって槍のように鋭角に先がとがった三角形の板を風路に並べる方法です。一般的にはこの一番、二番の方法を併用するケースが多いようです。
三番目は格子です。風路に格子状の障害物を置いて、風洞断面の下から上まで乱れを与えます。格子の間隔を調整することで乱れの強さが調整できます。
5. 風洞形式による違い(境界層の作り方)
上記の境界層の作り方は、風洞の2形式、エッフェル型風洞とゲッチンゲン型風洞ではやや異なるようです。
エッフェル型風洞の場合はほとんどがラフネスブロックとスパイヤーを併用しています。
一方,ゲッチンゲン型風洞ではラフネスブロックと格子が半々です。格子は上空の風速を模擬する用途と考えられます。
6. 風洞断面積と閉塞比
風洞実験では、風洞内の風速が風洞壁面の影響を受けないようにしなければなりません。風洞に対して模型が大きすぎたり、風洞の壁面に模型が近づきすぎると、それだけで風速が大きくなってしまいます。このため風洞断面に対して、模型建物による閉塞の割合、閉塞率をチェックする必要があります。閉塞率は経験的には3パーセント以下であればほぼ影響はないといえます。実際にほとんどの風洞実験施設では5%以下に制限しているようです。
7. 模型の大きさ
周辺の建物をどこまで作るかは、
①計画建物の影響範囲として経験的に建物高さの2~3倍の範囲とする。
②風洞施設のターンテーブルに収まる大きさとする。
この2つの要因で決まっているようです。
①の建物高さの2~3倍では、たとえば30階建て100mの建物では3Hの範囲を模型化すると、1/300スケールでは直径2m、1/400スケールでは直径1.5mとなります。
②の風洞施設のターンテーブルの大きさは、前記模型が収まるように直径1.5~2.5m程度で作られており、実験施設にあわせて作ることになります。
8. 測定高さ
測定高さは1つは調査対象によって決められ,歩行者を対象とした場合には1.5~2.5m、木造家屋を対象とした場合は建物の軒高に相当する10m程度とされています。
歩行者を対象とした場合の高さとは、風環境評価尺度によって高さが規定されており、村上法では1.5m、風工学研究所の方法では2.5mとなっています。実験模型での測定高さは縮尺1/300ですと村上法では0.5mm、風工学研究所の方法では0.83mmとなり、微小風速計で測定できる限界となっています。
この実態についての記述は、日本建築学会大会学術講演梗概集「ビル風 : 建築物の周辺気流 : その4 風洞実験の実態調査」1978-08-31を参考として、当社の実績をベースに考察しながら作成しました。
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